001 僕がお遍路に出た理由

キッカケは突然やってきた。

20126月上旬、東京勤務の直属の上司が私の勤める支店オフィスに出張でやってきた。

僕は会議室に呼ばれ、彼は唐突に切り捨てた。

上司「君、仕事のスピードが遅いみたいだねぇ。来週からもう今の仕事(事務業務)をしなくていいよ。別のことをやってもらう。でもそれはここではできないから。東京へ転勤になるけど来られる?来られないって?じゃあどうする?営業でもやるか?あっはっは!」

前任者の退職に伴って大量の事務仕事を引き継ぎ、半年かけて熟練してようやく自分1人でこなせるようになってきたところだった。大きな山を越えたという達成感。視界が開けた感覚。仕事が面白いと感じ始めていた。

そんな矢先の晴天の霹靂(へきれき)。

大量の仕事件数、不完全な引き継ぎによる不明な業務プロセスの模索、新規案件の増加、震災の影響による混乱などによって残業時間が大幅に増えていた。その結果「仕事が遅くて要領の悪い人物」という印象を与えたようだった。
そのことをいくら説明したところで、もはや聴く耳もたず。。。

僕 「どうしてなんですか?どうしてそうなるんですか?』

彼は自分の主張を正当化しようとするかのように、こう付け加えた。

上司「君、好きな色は何色?」

僕 「そうですねぇ。青です。」

上司「今、答えるまでに少し間があったでしょ。そういうのは間髪入れずに答えないと。」
「君みたいなのを牛歩(ぎゅうほ)タイプというんだよ。」

僕 「はぁ?」

そのようにして彼は、僕に対して「できないやつ」のレッテルを貼りつけた。
それが今回の出張の目的らしかった。

果たして、僕は本当にダメな人間なのだろうか? 使えない人間なのだろうか? 会社の上司が、僕の人間性まで否定するということは一体どういうことなのか? 自分は何者なのか? ここからどうしていけばいいのだろうか?

自信と希望とやる気に満ちていた昨日までの自分は、このようにしてたたきのめされた。モチベーションの落差はあまりにも大きく、箕面の滝をはるかに凌ぎ、落差日本一の称名滝ほどかと思われ、滝壺にドボンと落ちるまでもなく、岩肌に打ち付けられたようなショックと、いろいろな意味での脱力感によろめいた。

よろめく足取りで自分の席に戻り、机の中や書棚の整理を始めた。いわゆるしんぺん整理というやつだ。

頭が混乱した状態から一夜明けて、ふっとひらめいた。

「そうだ、いまこそ、お遍路に出よう!」

そのとたん、一転して前向きな気持ちが僕のところにやってきた。青くて広い海の風景が目の前に広がり、波や風の音、鳥や虫の鳴き声が聞こえてくるのを聞いた。

人生の迷いは大いにあったが、お遍路に出ようという心に一切の迷いはなかった。

 

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